ハイトーンボイスを出すためにトレーニングを始めるとして、どの様なスケジュールで行ったほうがより効率的に、良い発声にたどり着けるでしょうか?それについて解説します。
ボイストレーニングのスケジュール
前提として、歌うためにボイトレは必要?
そもそもなんでボイストレーニングなんて必要なの?という方もいらっしゃるでしょう。
楽器の演奏やスポーツなどと違って、自分の身体を使うだけなんだから、人に教えてもらったり、一生懸命トレーニングをする必要なんて無いんじゃないの?という方もいらっしゃると思います。
それは言葉を選ばずに言えば、何も知らないからトレーニングの必要性を感じていないだけ、という感じです。
私も最初はなんとなくそんな考えを持っていました…
が、これは言ってみれば、メジャーリーグで活躍する日本人選手を見て『かっこいいから自分も150km/hのストレートを投げてみたい』と言っているのと同じです。
でも普通そんなことはあまり考えないですよね。大きな身体、鍛えられた筋肉、素早い動きなど、それを目にすると、とてもじゃないけど今の自分ではそんなことは無理で、少しでも近づいて、せめて100km/h、いや、、90km/h、、のストレートでも投げようとしても、相当な身体づくりとトレーニングが必要であることは、漠然とでもわかります。
しかし、何故か歌に関しては、それほどトレーニングの必要性を最初にイメージできません。
プロが歌っているのを見て、なんとなくテクニックさえ身につければ、自分も同じ様に歌えるのではないかという幻想を抱いてしまいます。
おそらくですが、歌を歌うために必要な筋肉も、その素早く適切な動きも外部から見えにくいため、どれほどのトレーニングを必要としているかぱっと見わからないため、知らないがゆえに必要性を感じられないのではないかと思います。逆に言えば、知れば知るほど、トレーニングをすればするほど、今までテレビやネットで見てきたプロアーティストの凄さを実感します。
もう一つ理由を挙げると、特にスポーツなどをせずに日常生活だけで自分の身体と過ごしていると、自分は自分の身体を自由に使えていると思い込んでしまっているのではないか、と思います。
詳しくは後ほど触れますが、ある程度ボイトレが進んでくると、実は今までいかに自分の身体の事(構造、動きなど)を理解しておらず、自分の身体と対話できていなかったのか、思い知らされます。
トレーニングの必要を今は感じていない人でも、とりあえず次の項目、最初の6ヶ月間の実践だけでもしてみてください。おそらく考え方は大きく変わると思います。
最初の6ヶ月間にすること
Youtubuなどでテクニックを学ぶのは今じゃない!
ハイトーンボイスを出したいと思ってトレーニングを始めたとき、私はYoutubeのHow To 動画などを結構見ていました。
それによってハイトーンボイスが出るようになったかと言うと、、結果駄目でしたね。
これはボイストレーニングの関係者だから、Youtubeじゃだめ!と言っているわけではなく、いまは明確にその理由が言えます。
①その人の状態や段階に合ったトレーニング法を取捨選択できない
『喉を開く』『鼻に響かせる』など、高音を出すためにいろいろなテクニックがあります。
でも、それをするにあたって大前提になるのはやはり姿勢や呼吸が正しく身についている必要があります。まずそれ無しには、どんなテクニックも正しく身につくことはありません。
また、例えばエッジボイスの出し方や、ホイッスルボイスの出し方など、魅力的な技術の動画を散々真似してみましたが、結果喉を痛めそうになるだけで、身につくことはありませんでした。
これは、決して動画の内容が悪いわけでないのです。どんな技術を学ぼうにも、基礎ができていない上に、ちゃんと身体も出来ていないので、動画の内容が正確に理解できず、真似も出来ていない状態でした。
今になって当時見ていたいろいろな動画を見返してみると(一部にはおかしな動画もありますが)多くの動画は『なるほどそういうことだったのか』という内容を含んでいます。しかしそれを学ぶのは、当時ではなかったと思えます。
②自分で自分の身体と対話出来ない状態で、客観的に状態を見る人もいない
前の話にも繋がりますが、自分自身の客観的な状態を把握できていない時には、何をやっても正しくトレーニングできないし、正しいかどうかの評価も自分では出来ません。
動画を見て一見同じ動きを真似しているようでも、ちゃんとした筋肉が動かせているか、ちゃんと脱力できているか、など自己評価できないと、やはりただおかしな癖をつけるだけになってしまうリスクがあります。
特にボイトレの場合、ギターの弾き方講座などと大きく違うのが、実際に動かしている筋肉やその動きが見えないことです。講師の動きも見えないし、自分の動きも見えません。
ボイトレがある程度進んでいれば、動画の中の講師がどんな筋肉の動かし方をしているか概ね想像がつきますし、自分の身体と対話できれば、自分の筋肉の動きもわかります。でも最初のうちはそれが出来ないので、動画だけで正しい自習をするのはなかなか難しいと思います。
自分で客観視出来ないのであれば、誰かに客観的に見てもらうのが一番なのですが、発声している人の姿勢や呼吸、喉の動き、口の動きなどをしっかり観察して評価できる人は普通周りにあまりいません。
最初の6ヶ月は身体づくりとクセ取りを中心に
では最初の6ヶ月は何をするべきか?
このコラムでは何度も言っているかもしれませんが、『姿勢と呼吸を中心とした身体づくり』と『今まで身についてしまった悪い癖を取る』ことを中心にトレーニングしましょう!
ざっくりまとめると、こんな感じになります。
トレーニング開始~1ヶ月
- 基礎体力の確認
- 呼吸や姿勢、体幹の基礎トレーニング
トレーニング開始 1ヶ月~3ヶ月
加えて
- 喉の力を抜く
- 発声や歌い方の癖を取り除く
- 母音発声のトレーニング
トレーニング開始 3ヶ月~6ヶ月
加えて
- 喉に力を入れない発声の練習
- 表情筋や舌筋のトレーニング
- 子音発声のトレーニング
残念ながら、まだ、ミックスボイスやエッジボイスなどは出てきません。
基礎の身体づくりと、クセ取りが中心です。
でも、それが必ず大きな飛躍に繋がります!
くどいようですが、これを↑忘れないでください。
ボイストレーニングスクールで学べること
ボイストレーニングの必要性を解説しましたが、ではボイストレーニングスクールで学べることは何?と思われる方も多いと思いますので、それを解説します。
ハイトーンボイス、ミックスボイスなどを得たいと思われている方、特に読んでみてください。
ボイストレーニングスクールで学べることと、ボイトレ教室の選び方
まず、ボイトレスクールで何が学べる?どうやって教室を選べばいい?という疑問がある場合、一番いいのは初回半額とか、スクールによっては初回無料というお試しレッスンがあるので、そうしたものをいくつか訪れてみるといいかと思います。
学びたいことは人それぞれ違いますし、人それぞれ性格も好みも違うので、先生や教室との相性の良し悪しが必ずあります。
その上で、スクール選びに関わる大きな要素がまずひとつあります。
スクールによって大きく傾向が異なることです。
そのスクール、講師が、『フィジカルトレーニング』傾向が強いか、『音楽トレーニング』傾向が強いか、です。
当然のことながら歌を歌うためにはどちらも必要なので、当然どこのスクールも両方を含みます。が、やはり限られた時間内で行うトレーニングですし、講師の出身も、どちらかと言うとフィジカルトレーニング出身、どちらかと言うと音大出の様な音楽家出身、という傾向に分かれると思います。
まずここについては、自分はどちらの傾向の学校に通いたいか、ぐらいは考えておいたほうが良いかもしれません。とにかく伸びやかに自由に歌が歌えるようになりたい!ということでしたら、どちらかというとフィジカルトレーニング重視のスクールが良いと思いますし、音楽理論をしっかりと学んだ上で、ソルフェージュなどの素養を積みたい、楽譜を見ただけで初見で歌えるようになりたい、という希望があれば、音楽家の揃うスクールに通ったほうが、目的にかなっていると思います。
どちらも軽視するわけではないのですが、教える時間も、学ぶ生徒さんが趣味に使える時間も限られています。ですので、スクール選びの際にある程度目的を明確にしておいて、それに合わせた学校が見つかるまで、いくつかのスクールの初回レッスンを受けてみるのが確実かと思います。
日常+ACADEMYはフィジカル傾向?音楽家傾向?
これは明確に言えます。日常+ACADEMYはフィジカルトレーニングの傾向が強いです。
楽譜を見て所見で歌ったり、和音を正確に聞き取れたり、というトレーニングではなく、自分の身体の構造を自分で確認してもらい、その使い方を学び、講師は生徒さんの筋肉の動きや力みを観察し、正しい発声に導いていく感じです。
もちろん音やリズムのトレーニングも行いますし、感情表現なども重要な項目としてトレーニングをします。でもまずは基礎の基礎、自分の身体の使い方と正しい発声の仕方が出来ていないと美しい表現にはたどり着けないので、その基礎を重視しています。
イメージとしてはこんな感じです。
- 発声に必要な身体の基礎トレーニング
- 発生に関わる筋肉などのトレーニング
- 音やリズムに関するトレーニング
- 感情表現など芸術性に関わるトレーニング
もちろん生徒さんによって優先順位も変わりますし、講師によっても傾向が違いますが、スクールの傾向を概ねまとめるとこんな感じです。
これには理由があります。
繰り返しになりますが、何より正しい姿勢や呼吸で発声が出来ない限り美しい歌を長く歌い続けることが出来ないため、まず多くの生徒さんがそのトレーニングを必要としている、ということがあります。
また、ピアノを使った音階練習(スケールトレーニング)などは、正しく外の音、自分の声を聞けるようになればYoutube等でも自主トレでできるため、レッスン中はその確認程度に留め、時間配分の重点は生徒さんの身体の使い方、筋肉の動き、余計な癖として現れる力み(りきみ)などを観察してあげて、それらを修正していく時間に使いたい、と考えています。
初回トレーニングでしたほうが良いこと
自分にあったボイトレスクールを探すにあたり、初回トレーニングでこれだけはしておこう!ということがあります。
- 自分の歌声に関する課題と解決法を解説してもらう
- 講師が教えるにあたって重視しているポイントを聞く
初回トレーニングではどこのスクールでも、まず少し歌ってもらって、その現在地に基づいたレッスンを提案されると思います。
この時、自分の歌声に関する課題をどの様に聞き取ってくれたのか、遠慮なく聞いてみましょう。
ここで具体的な指摘を2~3は挙げて頂けない講師は、とりあえずやめておいたほうが無難です。
ちゃんと観察して、改善に導いてくれる講師であれば、初回の30分程度生徒さんを見た時に、いくつかの課題が見つかり、概ね3ヶ月程度先まで教える内容のイメージが出来ていると思います。
このイメージが出来ない先生であれば、おそらくスクールの用意したカリキュラムを只々なぞるだけになるので、あまり通う価値が高くないかもしれません。
それから、講師が教えるにあたって重視しているポイントも遠慮なく聞いてみましょう。
前に書いている通り、それぞれ講師によって傾向が異なります。ここでできるだけ相性の良い、自分の目的に合った先生に出会えることが理想です。
一番やばいのは、自分の教える軸が無い講師です。背景も哲学的なものも無い講師ですと、やはりスクールの用意したカリキュラムをなぞるだけで、あなたに合わせたトレーニングが出来ない可能性があります。
講師に背景があり、自分の考えがあり得意な教え方があり、それが自分の学びたいものに合っている人を選ぶことが、満足の行く経験に繋がります。